Competencies

アウトソーシングを行う上で、時差が大きな障害になる場合があります。時差については、短所と長所について時間をかけてよく協議することが必要です。ここでは、世界中のお客様との仕事を通じて時差を管理してきた私たちの経験をご紹介します。

ベトナムのタイムジーンマップ

世界の地域は異なるタイムゾーンに属します。タイムゾーンは、国境や国内の境界によって異なります。図は、世界の標準タイムゾーンを示しています。

ベトナムはグリニッジ標準時より7時間進んでおり、世界各地とでは以下の時差があります:

  • EST(米国・カナダ):ベトナムの方が、標準時間で12時間、夏時間で11時間進んでいます。
  • PST(米国・カナダ):ベトナムの方が、標準時間で15時間、夏時間で14時間進んでいます。
  • MDT(米国・カナダ):ベトナムの方が、標準時間で14時間、夏時間で13時間進んでいます。
  • シドニー(オーストラリア):ベトナムの方が、標準時間で3時間、夏時間で4時間遅れています。
  • ロンドン(英国):ベトナムの方が、標準時間で7時間、夏時間で6時間進んでいます。
  • CET(フランス、デンマーク、ノルウェイなど):ベトナムの方が、標準時間で6時間、夏時間で5時間進んでいます。
  • 東京(日本):ベトナムの方が東京より2時間遅れています。

 時差の長所と短所

「フォロー ザ サン(Follow the Sun)」モデルに示されるように、オフショア開発では時差をうまく活用することにより、お客様が夜の間に作業をすることで次の朝には結果を得ることができます。この「24時間体制」によって製品開発を早めたり、応答時間を短縮することができるため、顧客サービスの向上が図れます。ただし、うまく対応しないと、コラボレーションがうまくいかなかったり、それによるコミュニケーションの遅れや誤解やリワークによる追加コストがかかる場合があります。

これは、異なるタイムゾーンでは、リアルタイムの会話が難しいからです。フォレスター社の2012年9月のアジャイル開発プロジェクトに関する報告「アジャイル - リーン エコシステムの正しいアウトソーシング先」によれば、「地理的に分散しているチームは、ワークフロー、やり残し作業の状況、課題や障害についての意思疎通が難しい。」ということです。オフショア チームが要求事項を明確するのに、多くのEメールのやりとりが必要になります。要求事項を明確にしてオフショア チームが理解するまで、作業が中断してしまいます。オフショア チームが要求事項を間違えて理解している場合はリワークが発生します。リワークや遅れにより追加費用が発生することで案件全体のコストが上がり、アウトソーシングによる利益も減ってしまいます。

時差の克服するには

私たちのプロジェクトのほとんどはアジャイル モデルを取り入れていますが、プロジェクト チームは異なる国に分散し、それぞれのタイムゾーンで作業しています。タイムゾーンの障害をプロセスとテクノロジーによって克服し、メンバーの結びつきが深まり協力し合えるように配慮しています。私たちは、オフショアでの作業モデルを企業文化でサポートするようにしています。双方から歩み寄って自主管理できるチームを設置し、作業の重複時間を決めて直接対話を可能にすることで、時差の問題を克服しています。

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オフショア企業文化の構築

企業文化とは、その会社のDNAのようなものです。私たちの会社では、働き方やあり方を決めているのは、①お客様の価値の創造、②イノベーションによる先進、③個の尊重、④長期的関係という、4つの価値観です。社員一人一人がお客様の価値の創造を理解するとともに、プロジェクトを成功させるために時差を克服することが重要だということを理解しています。プロジェクトを成功させるためなら、私たちは長時間や時間外の作業も厭いません。その代わりに、作業時間に柔軟性を持たせています。作業を終わらせるために遅くまで仕事をしたら、その分の休みを補償しています。また、勤務時間外の保守作業や会議への出席が必要な社員には、VPNやIPフォンなどリモートで作業できる環境を認めています。

従来のアウトソーシングのように、言われたことだけをすればいいというのではなく、自分のプロジェクトだという積極性と自覚を持つようにしています。こうしたことは、オフショア チームがお客様のチームと一体感を持つことができて、はじめて実現します。私たちのプロジェクトでは、お客様の幹部がオフショア チームを訪問した際に、製品のビジョンやKPIについてチームと意見交換することもよくあります。また、オフショア チームの作業環境は、お客様のチーム環境に合わせて設置します。VPNは、お客様の共用サーバーにアクセスできるようにします。場合によっては、オフショア メンバーがお客様のEメール アカウントを使ったり、お客様の連絡先リストに乗ることさえあります。こうした環境やインフラを整備することにより、生産性の向上が図れるだけでなく、オフショア メンバーがグローバル チームの一員だという一体感を持つことにつながります。

アジャイルプロセス

私たちのデリバリ モデルでは、コミュニケーションがとても大切です。多くのプロジェクトでアジャイル スクラムを導入しているため毎日ミーティングを行っていますが、従来のウォーターフォール モデルによるプロジェクトでも、この慣習は生かされています。日次ミーティングの議事録を作成し、各国に分散しているチームに送付、あるいは共通のワークスペースにアップし、メンバーは誰でも閲覧することができます。

通常のプロジェクトでは、製品管理者・システム設計者・スクラム マスターはお客様のチームに所属し、開発チーム(開発者、試験者、業務アナリスト)はベトナムに置きます。私たちの場合、多くの場合はスクラム マスターはベトナムにいます。スクラム マスターがオフショアにいることで、コミュニケーションのボトルネックになることを避け、チームの士気が向上します。

相互信頼を助長し、コミュニケーションを円滑にするため、定期的にお互いのチームを訪問するようにしています。お客様の製品管理者、技術設計者、主要メンバーの訪問がオフショア チームを訪問し、要求事項を検討したりトレーニングを実施したりします。オフショア チームのメンバーも、知識移転、企業文化理解、担当者同士の打ち合わせを目的としてお客様を訪問することがあります。お互いに個人レベルで理解を深めることによって信頼は深まり、コミュニケーションもより円滑になります。

チームの生産性を高めるために重要なことの1つに、継続的なインテグレーションがあります。私たちのスクラム チームは、一日に一回インテグレーションを行います。頻繁にインテグレーションを行うことで、バグを早期に発見することができます。継続的にインテグレーションを行うには、プロセスだけに頼るのではなく、ツールやチームの技術力や訓練が必要です。高度な試験自動化や、自動ビルドによってソースコードを集中管理するレポジトリが必要です。チーム メンバーはプロセスを厳格に守る必要がありますが、その一方でプロセス遵守のためにツールも使用しています。レビューや単体試験が完了していないソースコードをチェックインすることはできません。継続的にインテグレーションすることにより、オフショア チームの一日の作業が終了した時点で、お客様のチームはその日の最初の作業としてソースコードや試験結果の評価を行うことができます。

ツールとテクノロジー

作業を完了させるための情報を共有したり、検索したり、共同作業に使ったりできる共有のワークスペースをチームに用意することも重要です。私たちのお客様の多くはソフトウェア会社や製品開発会社ですが、こうしたお客様とのパートナーシップにより、オフショア チームはお客様と同じ環境で作業することができます。人気のあるアジャイル プロジェクト管理ツールは、Assembla、Atlassian、Microsoft TFS、Rally などです。プロジェクトごとに、ナレッジ管理レポジトリとしてWiki サイトを設置します。Wiki サイトの情報は、プロジェクトが進むにつれて充実していきます。オフショア チームが書き込む記事の数が、お客様のチームが書き込む数を上回る場合もあります。

コミュニケーションについて、Eメールは重要な情報交換の手段ですが、Skype や Microsoft Office Communicator なども活用します。スプリントのデモやウェブ会議を行う際は、TeamViewer、GoToMeeting、WebEx などをよく使っています。主要メンバーがリモートで作業する際は、自宅などからオンライン会議に参加しやすいように配慮しています。TV会議システムは、相手の顔を見ながら話すことができるので、お互いの信頼が深まります。メンバー一人一人がウェブカムを使って、会議室でポリコムを使うようにTV会議に参加しています。主要メンバーは、Vonage や magicJack などを使って、簡単に国際電話を掛けたり、自宅から会議に参加することができます。

作業重複時間

適切なツールやプロセスを用意しても、離れた地域でチーム同士がリアルタイムで情報を交換する必要があります。最低でも1~2時間は、お客様とオフショアのチームが共同作業できるようにしています。この時間を利用して、プロジェクトの懸案事項を解決したり、要求事項を明確にしたり、デモやフィードバックを行ったりします。また、毎日のスクラム ミーティングを行ったり、課題などについて検討したりします。下表は、私たちがお客様との間で設定している重複時間を示しています:

お客様のタイムゾーン

(標準時間)

時差

重複時間

お客様の時刻

ベトナムの時刻

重複時間

EST

+12

07:00-09:00

19:00-21:00

19:00-23:00

07:00-09:00

2

2

PST

+15

06:00-07:00

19:00-22:00

21:00-22:00

10:00-13:00

1

3

MDT

+14

07:00-08:00

18:00-22:00

21:00-22:00

08:00-12:00

1

4

シドニー(オーストラリア)

-3

12:00-17:00

09:00-14:00

5

ロンドン(英国)

+7

07:00-12:00

14:00-19:00

5

CET

+6

07:00-12:00

13:00-18:00

5

東京(日本)

-2

11:00-20:00

09:00-18:00

9

シンガポール

-1

10:00-19:00

09:00-18:00

9

まとめ

時差を克服する手段はいろいろありますが、私たちは適切な作業プロセスを定義することで、逆に時差をアドバンテージにしています。最も大切なことは、私たちの企業文化を軸に作業慣習を設定することで、オフショア チームがお客様のグローバル チームと一体感を共有できることです。

*** 画像出典:http://en.wikipedia.org/wiki/File:Standard_time_zones_of_the_world.png